ロアアームバーを装着して剛性を強化したボディ
吸排気効率を高めた高回転高出力型エンジン
流星のごとく流れる走しりに
誰も僕の前には出られない
出られない・・
出ら・・
ジリリリリリリ
トゥルルルルルル
ピピピピピピピピピ
寝不足の頭に響く目覚まし時計
消しても次の目覚まし時計が待機していて
次々と鳴り響いていく
仕方なくベッド這い出て窓を開ける
冷たい風と西日と公園で遊ぶ子供の甲高い声が
いっぺんに部屋に流れ込んで来た
都会に出れば高い給料がもらえる仕事がいくらでもある
あてはないけど出ればなんとかなる
車検が近づきいよいよ金が足りない現実を
付きつけられた僕は
愛車のユーノスロードスターを実家に残し
都会に仕事を求めて出てきた
”待ってろよすぐに迎えに行くからな”
自分とユーノスロードスタが一緒に写った写真
今はこれが励み
こいつのためならどんな仕事だってできる
空だって飛べる気がする
だけど現実は甘くはない
何もできない者には高校生のバイトのような
仕事しかみつからない
車検代の工面どころか生活費さえ怪しい状態
「うちのお店に来なさいよ」
同じアパートに住むバーを経営してるママ
フラフラしている僕に見かねて声をかけてくれたのが
全ての始まりだった
男だけどママ
そう
オカマバーで働く事になったのだ
もちろんそっちの趣味はない
特技も資格もない自分だけど
細くて白い体つきと童顔が
ママが言うにはイケテるそうなのだ
「いらっしゃいませ」
「ぶっちゃークン今日も来ちゃった」
「わーありがとうちょーうれしい」
僕の設定は男が好きなかわいい男の子
もちろんノーマル
男になんて興味はない女の子が好きに決まってる
だけどここでは内気なウケ役なんだ
しかしこれがなぜか好評
一つ間違いがあるとするなら僕のお客さんは
ほぼ100%女の子
最近流行りの腐女子と呼ばれている子達
やっぱり本物の男から見ると
偽物は隠しきれず敬遠されるらしい
だけど一人だけ男のお客さんがついてる