その日私はひさしぶりに1人で電車に乗ってた
電車は苦手
ていうか他人がいっぱい乗ってる乗り物とか
いっぱい他人がいる場所が苦手なのです
これはヒキを卒業した今でも
治りません心臓がドキドキしっぱなしなのです

目指すは池袋駅

そう長い距離でもないんだけど
たぶん数分とか十何分とかホント些細な時間
だけど私にとっては一時間にも二時間にも感じる長い時間

池袋駅〜
終点です〜

的なアナウンスがあってからがまた長い
ゆっくりゆっくりホームに入る
とっとと入りやがれて感じで
やっと電車を降りて
今度は人ごみの中
外に出なきゃならんのです

短い高校生活時代はよく利用してた駅だけど
さすがにブランクがありすぎた
あーどこから出ればいんだろ
もうだめだ電話して来てもらおう

気持ち的にもテンパってて
もう動けなくなってしまった
待ち合わせは駅を出た所にあるデパートの前
だったんだけど
そこに行けなくて電話をかけた
改札を出たままぼーっと立ってた

「もしもし迎えに来れないかな無理なんだけど」
「今どこ?」
「改札は出た」
「え?わかるよね何やってんの?」
「もう駄目だやっぱ帰る」
「あーわかったからそのまま立ってて」

20分ぐらい待たされた
その間に沢山の人が目の前を歩いて行く
右に行く人
左に行く人
沢山の人が早足で通り過ぎて行った

「何甘えてんの?馬鹿でしょ」

非常勤講師の仕事を終わらせたせんせーが
ほんのりたばこの匂いをさせてやってきた
せんせーはたまに
どっかのスクールでも働いとる
時間は19時を少しまわってたとおもう

せんせーは某SNSでサークル的なコトをしとるらしい
今日はそのオフ会というか
忘年会をやるって事で私も駆り出された
なんで私がそんな縁もゆかりもない
オフに行く羽目になったのか
それを説明するに話を少し戻すことになる

私がせんせーの家に居候してだいぶ経った
どんどん私の物が増え
今では居候のくせに自分の部屋まである始末
それはいいとして
私のブログをせんせーは知らない
そして私もせんせーのブログを知らない
ていうか
お互い見せたくないから
探らないのが暗黙の了解になっとった

その日私は怪盗ロワイヤルという携帯電話ゲームをやってた
最近CMでも流れるようになったから
知ってる人も多いかもしんない
私は正式openしてすぐに始めた
このせいでパソコンから離れ気味になっとる
単純なゲームなんだけど楽しい
他人の持ってる宝を奪い合うゲーム
もちろんいざこざも多い
ココが楽しい
人のいざこざを観察するのがこのゲームの醍醐味だとおもてる
俺のお宝取ったな!先に取ったのはそっちだろ!
みたいなやり取りを眺めてると幸せな気持ちになる

「おーいちょっと来てすぐ来て」
「あー忙しい」
「いいから!すぐ来て」
せんせーがイラっとしだした声を出したから
しょうがない携帯をピコピコしながら
せんせーの部屋に行った

「あーなに?」
「なんか打って こんばんはでいいから」

”なんかって・・・・
 チャットっていまどき何やってんだよ・・・”

それはせんせーが入ってるらしきサークルのチャット
のようだった

:こんばんは

そう打った瞬間
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
的なレスがいくつも返ってきた
なんていうかノリが電車男的な
なんとも言えないノリ
忘れられた2ch用語的な物も溢れていた
名乗ってもないのにみんなが私を
ハンドルネームらしき物で呼んでるし
たぶんせんせーは私のコトを勝手に書いてたんだ
まあ私も書いてるから責められない
しかし勝手にハンドルネームまではつけてない・・・
私はセンスの悪い名前でこの先
呼ばれる事になった

同時にスカイプもしてたようで
スカイプなんてマジで嫌だと言ったのに
参加させられてしもうた
ここでも同じセンスの悪い名前で呼ばれた

せんせーが入ってるのは車のサークルで
その車に乗ってる人や将来乗りたい人
そしてその車に興味がある人の集まり
ようは何でもおk的なサークルだった
もちろん私はそんな車・・・
いや車自体ホントどうでもいいし
てかそんな人の集まる場所に行っても話す事も無い
だけどせんせーがブログで私の事を書くもんで
みんなが連れて来いとねだったらしい
こうして私は強制参加させられる事になった
こういうのを 客寄せパンダ って言うのかな
客は集められないな
見世物って言うのかな

会場は山手線内にある駅で降りて
少し歩いた所にある場所だった
会場に入ってすぐに場違いな事にきずいた
会場もそうだけど
来てる女の人はみんな気合いが入ってた
男の人はカジュアルな人も多かったけど
それでもお洒落だったし
せんせーは仕事のまんま来たから
しゃんとした格好しとった
なんで事前にこういう事を教えてくれなかったんだと
少しだけムカっとした

キャスケット
ダウン
スキニー
ブーツ

恥ずかしすぎて帰りたくなった

せんせーが書いてたわたしの登場に
一瞬場が湧いた
どんな私を書いてたのかは知らない
みんながどんな想像をしてたのか
がっかりさせちゃったのか
それとも想像どうりだったのか
みんなが例のセンスの悪い名前を言いながら
私とせんせーを囲んだ
ちょっとした質問責めに
息ができなくなりそうになった
のどが詰まって声がでなくなりそうになった
金縛りの時に
言葉が出したいのに出ない
あの感覚に似てた

「こんばんははじめまして」
綺麗な人だったけど香水がめちゃ臭い女が
私に寄って来た
「どうも」
「あなたが彼のかわいい彼女さん?本当にまだ幼いのね」
「19ですんですいません」
「私ねこのサークルが設立した当初からいる古株なんだ覚えといてね」
「はあ」
「あなたは車に興味あるの?」
「あんまり・・・」
「なら話が合わなくてつまらないかも、そういうサークルなの知ってて来たの?」
「はあ」
「ずいぶんカジュアルな服装で来たんだね」
「すいません」
他の女の人がこの香水女を見つけて話しだして
私は解放された
マジで怖かったチクチクした
でもきっと悪気はない
思った事を口にしちゃうタイプなんだろうなと思う事にした

チャットの雰囲気と
スカイプの声なんかで想像はしてたけど
参加者の年齢層は高めだった
少なくても私と同じぐらいの年の人は1人もいなかった
ノートブックを持参してる人が多かったのも
さすがだなといった感じだった
幼女が日向ぼっこしながら
丸くなって寝てる萌え絵をブラウザに映し出して
せんせーの書いてた私をイメージして
描いた物だと見せてくれた人もいた
がっかりさせちゃったかな
夢壊してごめんね
て気持ちになった

料理は豪華だったけど味は殆ど覚えてない
せんせーに恥をかかせたら悪い
それだけしかなかった
まったく話はわかんないしはっきり言ってつまんなかった
でもなるべく楽しそうにしなきゃと
がんばった
ちょーがんばった
たまに人がよってきて話しかけてきたりするのは
苦痛だった
知らない人と楽しそうに話すのが
苦痛でしょうがなかった

でも縁側で無邪気に昼寝するような子を
演じないとせんせーが恥ずかしい思いをするんだ
頭痛もしてきたけど我慢した

宴もたけなわ
そろそろお開きカナって感じに
なってきた頃トイレに行きたくなった
これが全ての始まりだった

悪夢の序章
トイレに行くと
香水女が泣いてて
別の女の人が肩を支えて慰めてた
見ないふりした方がいいなと思って
下を向いて目を合わせないようにしとった

すっきりして手を洗ってると鏡ごしに視線を感じた
顔をあげると鏡には私を睨みつける
香水女がいた
目の下はマスカラだかアイランだかで黒くなっとるし
鼻の化粧は剥げてるし怖かった
たぶん鏡を見てるだけ
私が関係あるわけないと
手を拭いて急いでトイレを出た

なんだったんだろ
その時は何がなんだかわからなくて
ただ心臓がバクバクして
自分の心臓の音で周りの音が聞こえない
ぐらいバクバクしてた

会場に戻るとさっきの
和やかで楽しい雰囲気が続いてた
私の食い散らかした料理を
せんせーが片づけてる最中だた
せんせーは私と住んでから
体重が3キロ増えたと言ってた
私が残したごはんをいつもかたずけてるせいだろう
でも元々細いから
むしろ私のせいで太れたと感謝してほしい

さっき見た地獄絵図が頭から
離れないまま
私は心臓のバクバクを悟られないよう
その場を凌いだ

お開きになったあと
車で来た人たちの車を見に行った
同じような車を見せられても
なんの感動もないけど
みんなさっきより興奮して楽しそうにしてた
そして解散となった

「楽しかった?気使わして悪かったな無理してただろ」
「楽しかったよ また来たいかはわからないけど」
「そっかありがと皆喜んでたし褒めてたよ」

そんなよくありがちな会話をしながら
駅まで歩いた
駅にはまだたくさん人がいて
忙しそうに歩く人達
少しほろ酔いで大きな声で話してる人達
いろんな人がいた
来た時と同じように山手線に乗って
池袋駅で降りて
埼玉へと帰る電車にのるためにホームに行った

来た・・・・

さっきの女の人・・・・

香水女・・・・

お化粧は綺麗に直されてたけど
目はまだ少し潤んでた
お酒のせいかもしんない
階段を下りて来た
見つからないといいなと思ったけど
せんせーは何も知らないから
声をかけちゃった

女の人は何も無かったように
笑顔でせんせーと話してたし
私にもその笑顔を向けた
私達が降りる5個先で降りるその人は
当然途中まで一緒に帰る事になった

女の人は32歳で独身らしい
参加者の中でも一番じゃないかてぐらい
すごい気合いが入ってる格好だし
なんとなく婚活臭がする感じ

折り返し運転だったから
反対から人がぞろぞろ降りるのを待って
それから扉が開いた
人は多かったけど
一番前に並んでたから座る事ができた

先生 私 女の人

という並びで座ることになった
なったというか女の人が意図的に私の隣に
座ったように見えた

さっきの事があって怖かったから
私はすぐに携帯を取り出して
アプリを開いてゲームを始めた
桃鉄を選んでみた
上を向いたら負けだと思った

「ねえ家の事も少しはした方がいんじゃない?
お弁当まで作らせてるんでしょ
女の子なんだからせめて掃除ぐらい自分でやろうよ」

私の耳に顔を近づけて
ぷーんとお酒の匂いがする息を吐きながら
女の人が私に話しかけた

「そうですねがんばります」

くわぁーそんな事までブログで晒してるのか
帰ったらちょっと説教しちゃると決心して
ピコピコ携帯で桃鉄をやりながら
目を合わせないで答えた

「まだ若いんだから同年代の彼氏作らないの?
年が近い方が話なんか合うんじゃないかな」

「そうですね」

「面白半分で居候してるなら出てった方がいんじゃない?
あなたがいつまでもいたらマトモな恋愛もできないでしょ」

「そうですね」

「ねえ本気で彼の事が好きなの?そうには見えないんだけど
便利に利用してるだけじゃないの?」


鈍い私でも流石に察した
この人はせんせーが好きなんだと

「電車の中で携帯いじくるのって迷惑行為だよ」
「音は切ってます」
「存在がウザイんだよ」

もうだめだ限界だと思った時に
降りる駅についた
女の人は笑顔で私に楽しかったねまたねと
少し大きな声で言った
私は会釈だけしたけど何も言えなかった

「あの女の人よくオフに来るの?」
「あーいい人だろオフ会の時はいつもあの人が会場の段取りしてくれるんだよ」
「へーそうなんだ怖いね」
「え?何が?」
「間違った偉いね」
これは嫌味でも何でもない素で間違えた

こうして初オフは終わった
もう行きたくない いや行っちゃいけないと思った
本当に怖かった

せんせーには何も話してない
話したらいけないような気がした
ただ
せんせーの身が心配だ

 

 


  ↓わたしとせんせーの似顔絵クリスマスカード